今から遡ること約20年前、アップルから初代マッキントッシュが発売された当時のコマーシャルをご存じでしょうか。その内容は、「1月24日、アップルコンピュータはマッキントッシュを発表します。そして、なぜ1984年が『1984』のようにならないか、その理由がわかるでしょう」というものでした。この『1984』とはイギリスの作家ジョージ・オーウェルの著作『1984』のことで、テクノロジーが情報管理と言論統制に用いられる未来の恐ろしい管理社会を描いたストーリーでした。

当時はコンピュータと言えばIBMやDECなどの大型コンピュータが主流で、まだまだ一般人にとっては雲の上の存在でした。UNIXワークステーションのサン・マイクロシステムズが設立され、オラクルがコマンドライン・インターフェースのデータベースをようやく軌道に乗せ、一般個人向けコンピュータのOSとしてはマイクロソフトのMS-DOSが使われ始めたばかりの頃です。そんな時代に、今でこそ当たり前となったマウス操作によるグラフィカル・インターフェースを搭載したマッキントッシュの登場は、非常に衝撃的でした。

その後、ウィンドウズの普及によって、ついに「パーソナルコンピュータ」というカテゴリーが認知され、コンピュータ技術は現在のように身近なものになったのです。アップルは、『1984』における管理社会の黒幕をIBMになぞらえ、マッキントッシュの登場によって「そのような暗い未来はこない」ことをアピールしたのでした。

さて、それでは業務用システムの開発現場はどうでしょうか。開発言語の主流はCOBOLやC言語からVisual Basic、C++、Javaへと変遷し、さらにはPerlやPHPなどのスクリプト言語まで選択肢を増やしてきていますが、いずれも共通しているのはテキストベースの言語だということです。統合開発環境などGUI化されているものもありますが、ソースコードは厳然たるテキストです。これらの言語を扱うプログラマーという職業は、まだまだ非常に専門性が高いものです。

ASTERIAには、かつてアップルがユーザ・インターフェースの世界にもたらしたのと同じことを、プログラミング言語の世界においても実現したい、という思いが込められています。グラフィカルで直観的なプログラミング言語を普及させ、プログラミングというものをもっと身近なものにしたいという願いです。

残念ながら、ASTERIAはまだまだ高価なソフトウェアです。まだまだ改善すべき点も多くあります。しかし、私たちはこういった革新的なソフトウェアがいつか個人の手に届くようになる未来を信じています。コンピュータが自分の指示通りに動いたときの、あのささやかな感動を、プログラミングの楽しさを、もっと多くの人に感じてもらうために。

この本を手にとって、この序文を読んでくれているあなたとの出会いに感謝します。この機会にASTERIAに触れてみて、次の20年がどういう未来になるか想像を膨らませてみるのはいかがでしょうか?